日本語教師の教案

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みんなの日本語の教え方

授業の流れ

 [単語] → [導入] → [確認] → [変換練習] → [作文]┐→ [応用]
       ↑                  |
       └──────────────────┘
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 授業前     みんなの日本語を使った授業    応用練習の授業

1つの文型について導入と練習をし、その文型が習得できたら、次の文型に移ります。全ての文型が習得できたら、その課は終了です。1つの課に掛ける時間は、2時間から4時間くらいです。

1つの課が終了したら、次の課へ進むのですが、所々で「誘う」や「案内」などのタスクをこなす練習を入れると、応用力が身につきます。

このサイトでは、「みんなの日本語」を使った練習を基礎練習、その後の練習を応用練習と区分します。応用練習の教え方については、「応用練習の教え方」をご覧ください。

1:単語の暗記

単語は、必ず授業前に暗記しておくように指示した方が良いです。直接法は、単語の意味を説明するのに向いていませんし、特定の言語で説明するのも、学習者に不公平です。それに、授業中に「○○は何ですか」という質問を許すと、授業の流れも悪くなります。

新出単語に関しては、学習者自身に補助教材を買わせて、各自で勉強させるのが一番良いです。どうしても買えない人がいるようでしたら、教師が事前に次の課の新出単語を配っておくのも良いと思います。準備できない場合は、このサイトの「みんなの日本語の単語」をご利用ください。

2:導入の仕方

学習者に「言いたいけど言えない」「知っている文型では正確に表現できない」といった状況を与え、そこで新たな文型を教えるのが導入です。

  導入の流れ 【1】教師が質問する
        【2】学習者が回答に困る
        【3】新たな文型を教える
        【4】言えるようになる

単に新たな文型を提示するよりも、【2】と【4】があった方が喜びが大きく、定着もしやすくなります。インパクトがあったり、面白かったりするとなお良いので、身近な話題などで工夫してください。この導入が教師の腕の見せ所でもあります。(この教案は汎用性に配慮したため、平凡な内容です。)

学習者の母語やセンスの良し悪しで理解度にも差が出るのですが、練習問題をこなすうちに理解度も高まってくるので、導入で完璧に理解させる必要もありません。

3:確認の仕方

導入した文型が理解できたかを確認するのに、「分かりましたか」と質問するのは無意味です。間違って理解していたり、十分な語彙と文型がないため質問できない場合があるからです。

適当な質問をし、正しく文型が使えたかで理解を確認してください。学習者に違いを説明させるのも良いです。導入を十分にするか、導入後に確認するかは、導入や文型次第です。

4:変換練習の仕方

習得とは「頭でじっくり考えなくても、瞬時に正しい文が作れること」なので、それにはたくさんの反復練習が必要です。単語を入れ替えたり、活用させたりするだけの単純な練習から、徐々に長い文を作っていきます。

基本的な練習法は次の通りです。
  T:キュー(Cue:指示)
  S:全員が瞬時に答える
  T:正しい解答
  S:正しい解答をコーラス(皆が声をそろえて繰り返す)

   ┌ T:教師  S:学習者全員           ┐
   └ S1:学習者の1人(数字は同一人物かどうかの意味) ┘

上に示したように、毎回正しい解答を入れると良いです。学習者が間違える度に授業を止めなくても、正しい解答を入れることで、ほぼ直ります。テンポよく授業を進めることで、学習者全員が集中して練習に参加でき、時間的にも効率がいいです。

また、「口頭」「絵」「フラッシュカード」などでキューを出すことで、単純な練習にも変化を持たせることもできますし、学習者の集中力を保つこともできます。
(絵カードは市販されています。この教案も絵カードの利用を前提としています。)

長いキューは学習者の負担も大きいので、一部を「絵」や「フラッシュカード」に替えるのもいいです。どうしても口頭で長い指示を出す場合は、2段階に分けるといいです。
  例)「ことができます」の練習
    T:話します           ←キュー
    S:話すことができます。
    T:話すことができます。     ←正しい解答
    S:話すことができます。
    T:日本語を           ←追加のキュー
    S:日本語を話すことができます。
    T:日本語を話すことができます。 ←正しい解答
    S:日本語を話すことができます。

キューを追加していく場合は、後ろから順に文を完成させると、記憶の負担が軽減できます。

5:作文の仕方

機械的な変換練習ができるようになったら、次は学習者に文を作らせる練習をします。
  例)「Vことです」の練習
    T:趣味は何ですか。S1さん。
    S1:映画を見ることです。
    T:映画を見ることです。
    S:映画を見ることです。

答えは学習者によって違うので、全員同時に質問することはできません。とは言え、学習者に1人ずつ質問するのも時間が掛かります。そこで、1人を指名した後に、正しい答えを全員にコーラスさせて、全員を練習に参加させると良いです。

指名は、キューの後にした方が緊張感が出ます。もし先に指名してしまうと、指名されなかった学習者は考えなくなるので、練習効果が下がります。

最後に、短い応答の練習をします。教科書でいうと「練習C」がこれに当たります。学習者と教師が1対1で練習をすると時間が掛かるので、学習者を2人組みに分け、学習者同士に会話させるといいです。問題は3問ほどしかありませんが、各ペアで自由に文を作らせ、練習を繰り返させると良いです。

学習者が練習している時、教師は各ペアを順番に確認します。個別の質問などにも、この時対応できます。もし、良い質問や間違いがあったら、皆にも説明し、共有すると良いです。

ここまでが1つの文型に対する練習です。次の文型は、また「導入」から順番に練習していきます。

6:応用練習

必要な単語と文型を習得した段階で、応用練習をします。応用練習と基礎練習とでは、目的も練習方法も異なりますので、別々の授業として教えた方が良いです。

このサイトでは、一部の応用練習についても公開していますので、必要な方は参考にしてください。
 → 応用練習

主要コンテンツ
本文中の記号の意味
 T :教師の発言
 S :学習者全員の発言
 S1 :学習者の1人の発言
 S2 :別の学習者の発言
 赤字 :ポイントや注意点
【 】:板書内容
[ ]:適当な単語で